発情シーズン最後に妊娠が成立した猫は、秋に入ってから出産することがあります。
この時期に保護された子猫は、秋の冷たい雨でダメージをうけていることも多く、命が危ういケースも!
まずは、保護すべき子猫なのかを判断し、保護した場合には保温をメインにしたケアが大切です。
ぐったりしている時に、砂糖水をあげると逆に命の危機に陥ることもあるので、安易な判断はしてはいけません。
必要なものや動物病院での費用目安についても知っておきましょう。
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まず、保護して良い猫なのか判断
母猫は餌を取りに行くために、短時間ですが子猫を置いていくことがあります。
それは育児放棄でもなく、猫の子育て中にはよくみられることですが、この時に人が子猫を保護してしまうとただの誘拐です。
周りに母猫の姿がなく、子猫だけで鳴いていても、すぐに保護するのは止めましょう。
母猫が迎えにくる可能性があるのに、子猫に人間の匂いが付いてしまうと、匂いが原因で育児放棄されてしまうかもしれません。
まずは2-3時間ほど様子を観察して、母猫が迎えにこないかを確認してから保護するのが良いでしょう。
しかし以下のようなケースでは緊急で保護する必要も!
- 雨が降っていて、子猫が水浸し
- 明らかにぐったりしている
- よく見える場所にいる
- 箱に入れられるなど、人為的である
雨がふっていて、子猫がずぶぬれの場合には、体温が急激に奪われることで子猫が死んでしまう危険性があります。
また鳴いていた子猫がぐったりとして動かなくなっているときも要注意です。
通常は人目に付かない狭い場所にいなくてはいけない子猫が、開けた場所に置いて行かれている場合には、カラスや他のオス猫に命を狙われることが多くあります。
そして段ボールなどの箱に入れられている場合、人為的に捨てられてしまった子猫の可能性が高く、母猫が迎えに来る可能性は無いでしょう。
秋に保護される子猫は、保温が大切
この子猫は保護した方が良い、と判断できた子猫には、まず何をしてあげるべきでしょうか?
その答えは『保温』です。
秋になると、朝晩の冷え込みや、秋雨の影響で、保護される子猫は体温が低下していることが多いのですが、子猫にとってはそれが命取りです。
そのために、秋など気温の下がる時期に保護した子猫は、まずなによりも保温処置を優先します。
まずは保温!最適な保温方法
まず柔らかなタオルで子猫をくるみ、濡れているときにはタオルで撫でてタオルドライをします。
ぬれていないなくても、柔らかいタオルで優しくなでることは、子猫の情操教育に良いとされているので、母猫が舐める気持ちで子猫を撫でてくださいね。
つぎに、小さめの段ボールに湯たんぽを置いて、タオルで包んだ子猫を入れましょう。
ただし、子猫が暑いと感じたら湯たんぽから離れられるようなスペースも大切です。
段ボール内が30度前後になると最適です。
段ボールの中に温湿度計を入れておくと、暑すぎたり、下がり過ぎたりが確認できますのでお勧めですね。
元気があって、動き回る子猫であれば、湯たんぽの方にもタオルを巻いて火傷に注意しましょう。
- 柔らかいタオルで包む
- 小さめのダンボールに湯たんぽを入れる
- タオルに包んだ子猫を入れる
- ダンボール内を30度前後に保つ
- 体が濡れていたらタオルドライをする
- 湯たんぽから離れられるスペースを作る
- 湯たんぽにタオルを巻いて火傷に注意
- 温湿度計で温度を管理
元気はあるか?
まずは温めて、子猫に動きが出てくるかを確かめましょう。
低体温になっている子猫は元気がありません。
そして低血糖になっている可能性もありますが、焦って砂糖水をあげるのは危険!!
温めて30分しても動かないという時にはすぐに動物病院に連れて行きましょう。
水は飲むか?
元気のある子猫は、スポイトや濡らしたガーゼなどで口元に水滴を付けると、舐めとります。
そして、喉をごくっと動かしていれば、お水を飲めると判断しましょう。
しかしお水を飲めないほどに元気のない子猫は長時間放置されていて、以下の状態にある可能性があります。
- 低体温
- 脱水
- 低血糖
もし、温めても鳴かない、動かない、元気が無い、水も飲めないという時には、脱水と低血糖の心配が出てきています。
この時に、自宅で子猫ミルクや砂糖水を飲ませると、『リフィーディング症候群』という状態になり、子猫が痙攣などを起こして死んでしまう危険性が!!
元気の無い子猫は、家で何とかしようとせずに保温しながら動物病院に連れていくのが最善です。
もともと元気いっぱいの子猫では、子猫ミルクを数滴あげて、飲めるか確認しましょう。
その後は少しずつ哺乳量を増やしていきます。
危険な状態の子猫
すぐに動物病院に連れて行ったほうが良い子猫のサインを以下にまとめます。
- 冷たい
- 動かない
- 呼吸が弱い
- 鳴かない
- ノミが大量に寄生している
- どこからか出血している
このうち、1つでもあてはまるなら、子猫は瀕死の状態ですから、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
その子猫は産まれて何日?
子猫が生まれて何日なのかを知っておくと、適切な温度やミルクの回数などを決めることができます。
- へその緒が付いている ⇒0~3日
- 目が開いている ⇒7~10日
- 耳が開いている ⇒10日前後
- 歩くように手足を動かす ⇒7~14日
- 自力で歩ける ⇒14~21日
- 自力で排泄 ⇒3週
- 歯が生える ⇒3~4週
あくまでも目安で、栄養環境などで前後することもあります。
とくに歯が生えるのは、母乳を沢山もらっている子猫では遅くなる傾向があり、あまり母乳を貰えなかった子猫は早く生えてくることが多いです。
子猫のお世話
子猫を健康に育てるうえで、もっとも大切なミルクのあげ方『哺乳』と、うんちやおしっこのさせ方である『排泄』について知りましょう。
秋に保護した子猫の場合は、体力が無いことも多いので、焦らずにゆっくりと哺乳していくことが大切です。
また、最初に述べた保温にも常に気を付けてください。
哺乳
基本的には、人工ミルク製品の表記にある通りに哺乳すると、間違いが少ないです。
しかし最初は弱っていて沢山は飲めないことも!
まずは2時間おきに哺乳し、一回量をしっかりと飲めるようになってきたら徐々に3時間おき、4時間おき、と間隔を伸ばしていきます。
- 生後0~7日 ⇒2~4時間ごと
- 生後7日以上 ⇒4~6時間ごと
- 生後0~7日 ⇒体重の10%~15%量
- 生後7~28日 ⇒体重の20%~25%量
- 生後21日~6週 ⇒離乳期(ミルクと離乳食)
もし、運よく授乳中の母猫がいる時には、保護した子猫もその母猫に育ててもらえることがあります。
人工哺乳よりも子猫の致死率や罹患率は低くなり、社会化も教えてくれるので母猫の力は偉大です。
しかしストレス下にある母猫は、新たに加わった子猫を受け入れずに攻撃することもあるので、母猫の様子次第となります。
だいたいの場合は都合よく授乳中の母猫が家にいることは無いので、人工哺乳がメインでしょう。
排泄
子猫は生後21日あたりまで自力で排尿、排便することができません。
母猫が子猫のお尻を舐めて排泄を促します。
つまり、母猫のかわりに人が子猫のお尻を濡れたガーゼなどで刺激することが必要です。
- 刺激するタイミング ⇒哺乳後
- 刺激する場所 ⇒おしり
- 刺激のポイント ⇒母猫のザラザラした舌をイメージ
排泄の刺激は、ベテランの動物看護士がコツを知っているので、子猫が便秘になってしまった時には、受診して実際にどうやるのかを見せてもらいましょう。
動画も参考にしてみてください。
温度管理
子猫の適温は生後何日かによって異なりますので、以下を参考にしましょう。
- 生後0~7日 ⇒32~34度
- 生後21日まで ⇒24~29度
- 生後28日以上 ⇒24度
湿度は55-60%が理想です。
また、子猫の時にしつけておくと良い事もいくつかあります。
以下の記事を参考にしてください。
保護したら動物病院に連れて行くべき
子猫を保護したら動物病院に連れていくことをお勧めします。
なぜなら免疫力が低下した子猫には以下のようなリスクが隠れているからです!
- ウイルス感染症
- 消化器内寄生虫
- ノミやダニ
- カビ菌による病気
- 先天性の病気
- ケガ
消化管内寄生虫とノミやダニ、カビ菌は人にも感染してしまうので要注意。
動物病院で、子猫に問題がないのかを確認してもらいましょう。
カビ菌かもしれない、と思ったら以下の記事を参考にしてください。
⇒猫カビは自然治癒を期待しない!真菌症の症状と治療法【獣医師監修】
料金
動物病院での料金がどのくらいかかるのか、先に知っておくと安心ですね。
料金は自由診療といって、各動物病院が妥当と判断した料金をつけていますので、あくまでも目安の料金として考えてください。
- 初診料:1,000~2,000円
- 身体検査:初診料に含まれることが多い
- ウイルス感染症検査:5,000~15,000円
- 便検査:1,000円前後
- 皮膚検査:500~2,000円
- 治療:5,000円~20,000円
料金に開きがあるのは、使用する検査機器の違いや、使用する薬剤の違いによるところが大きいでしょう。
寒さが出てくる秋に保護された子猫は、弱っていて治療が必要なケースが多いのが特徴です。
暖かい季節に保護される子猫よりも、治療費は高くなる傾向があります。
まとめ
秋に保護される子猫は、低体温など命の危険がある状態が多いです。
しかし焦ってすぐに保護せずに、母猫が迎えに来ることもある、と頭に入れておきましょう。
保護が必要と判断できたら、まずは保温して、動物病院に連れて行くのが安心です。
寒さで弱っている子猫であれば、動物病院での治療費も高いことが多いです。
病院で問題ないと判断された元気な子猫でも、最初は焦らずに少量から哺乳していくことをお勧めします。
他の季節よりも命を落とすリスクが高い秋生まれの子猫が、正しい知識によって少しでも助かる可能性が上がりますように!
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