猫の腎不全といえば、根治治療などなく進行を見守っていくしかない、と考えている方も多いでしょう。
しかし、進行を遅らせるための努力、急性腎不全にならないよう管理、そして辛い症状に対しての対処法があります。
まずは猫の腎不全というものを知って、今後にどんな検査や治療が必要か、進行によるトラブルへの対処法を把握しておきましょう。
猫の慢性腎不全の治療について真剣に取り組んでいる動物病院は、必ず定期的な尿検査と血圧検査、体重測定をしているはず!
腎不全は血液検査だけでわかるはずじゃないの?と思った方は、ぜひ読んで頂きたいです。
この記事は、猫の腎不全の知識をつけて、闘病中の猫の苦しさを少しでも軽減させる方法、また、猫が腎臓病にかかりにくくなる対策を紹介しています。
膀胱炎についてはこちらの記事を参考にしてください。
⇒秋は猫の膀胱炎シーズン?早く気づきたい症状と原因を解説【獣医師監修】
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知っておきたい猫の腎不全
慢性腎不全とは、腎臓の機能低下が3ヵ月以上にわたって持続している状態です。
高齢の猫では慢性腎不全と診断されることが多く、15歳以上の猫の5頭中4頭が罹患していると言われています。
生活環境や食餌の品質の向上などによって猫の寿命が延びており、高齢化していることが腎不全増加の背景でしょう。
そして何よりも飼い主さんの心を締め付けるのは、慢性腎不全が進行性で、不可逆性であるということ。
つまり、一度失われた腎機能は再生できないというところです。
とはいえ、腎機能の再生は不可能ですが、進行を早める要因を抑えることが可能です。
そのため、どれだけ早く発見できるかどうか、治療を早く開始できるかどうか、進行を遅くできるかどうかが大切なのです。
- 腎不全は進行していて、腎機能は再生しない
- 残りの腎機能を守ることが大切
- 早期発見、早期治療
- 進行を早める要因を減らす
腎臓は生きていくために大切な臓器なので、体内に2つあります。
体の外に老廃物や過剰なものを出して、必要なものを体に残す、という働きを持っています。
とても大切な機能なので、腎臓の機能は多くの余裕をもっており、1個の腎臓を失っても機能としては問題ないほど!
ですので、腎臓が悪くなってもすぐに気づけないという問題があります。
- 腎臓は半分しかなくても大丈夫
- 腎臓機能が1/4量になると問題が出る
- すぐに腎不全にはならない
- 腎機能を大切に守れば長生きできることが多い
猫の腎不全を早く見つけるためには!
腎不全の症状が出始めている時は、既に腎臓機能の75%以上が失われていると言われています。
猫の体調が悪くなって、飼い主さんが変だなと気づいて、検査をする頃にはかなり進行した腎不全状態であることがほとんでどです。
症状が出る前に検査をして、腎不全に気づけるようにしましょう。
早期腎不全の検査
腎機能が低下していることを早い段階で確認することができる検査がいくつかあります。
1つは血液検査でSDMAという項目を測定すること、もう1つは尿検査です。
腎不全の指標としてよく使われているBUNやCREは腎機能の75%が失われてから上昇してきます。
それよりも速い段階で上昇してくるのがSDMA。
腎臓が気になっている飼い主さんは、若い時でもSDMAの検査を希望されます。
そして、大切なのが尿検査、オシッコの中のタンパク質が漏れ出ていないかを確認します。
尿中のタンパク質の指標をUPCと言い、UPCが高い時には腎臓に問題が出ている可能性があります。
また、オシッコの濃さを尿比重といいますが、初期の腎不全では尿比重が低くなっていることがわかっているのです!
オシッコを濃縮できずに、薄いオシッコを出しているのは腎機能が低下しているせいかもしれません。
- 血液検査でSDMAを測る
- 尿検査でUPCを測る
- 尿検査で尿比重を測る
SDMAもUPCも、基準値よりも高ければ異常です。
尿比重が基準より低ければ、何らかの問題がある可能性があります。
UPCは、尿にタンパク質が増えるような他の要因もあるので「高いからと言って直ぐに腎不全だ!」ということはなく、膀胱炎などでもUPCは高くなるので獣医師の判断を仰ぎましょう。
腎不全を悪化させる原因
腎機能が低下しているのが分かったところで、絶望するのではなく、さらに腎臓に負担をかけるものが無いかどうかを確認しましょう。
腎臓への負担を軽減することで、残った腎機能を守っていくことができるからです!
- 腎毒性のある薬剤
- 脱水
- 持続する高血圧
- 尿中のタンパク質の増加
つまり、上記の原因を改善することで腎臓の機能を守ることになりますので、一つ一つ解説していきます。
腎毒性のある薬剤
腎臓に負担のかかるお薬は沢山あります。
有名なものでは、アミノグリコシド系抗菌薬、そして鎮痛剤であるNSAIDs(エヌセイズ)、抗ガン剤で使用されるシスプラチンです。
腎不全が発見されて、これらの投与中であれば投与を中止する可能性が高いでしょう。
- ゲンタマイシン(アミノグリコシド系抗菌薬)
- NSAIDs(非ステロイド系の鎮痛薬)
- シスプラチン(抗がん剤)
脱水
脱水状態とは、体の水分が足りていない状況です。
腎臓は体内の水分を調節して、老廃物を外に出しているので、体の水分が足りない脱水状態は腎不全の進行を早めてしまいます。
愛猫が腎不全と診断されたら、脱水を予防するために以下のような工夫をしましょう。
- ウエットフードを給餌
- 水飲み場を複数設置
- ファウンテン式(流れるタイプ)の水飲み場も利用
- 水を置く場所はトイレと食餌場所から離れた箇所
ウエットフードは好き嫌いがあるのですが、猫が好むならぜひ取り入れましょう。
猫が喉が渇いたな、と思ったらすぐに飲めるように、複数個所の水飲み場を設置して、流れる水が好きな猫であればファウンテンタイプを使用するのも良いですね。
匂いの強いものの近くにある水を猫は嫌うので、必ずトイレや食餌とは離れた場所にお水を置くように!
高血圧
高血圧の猫の腎臓は、常に負担がかかっている状態で腎不全の進行が早くなります。
治療ガイドラインでも、猫の最高血圧が160以上ある場合には治療を開始して血圧を下げるように示されています。
もし愛猫の最高血圧が180以上であればかなり重度な高血圧なので、すぐに血圧を下げるための降圧剤治療が開始されるでしょう。
治療が開始された後は、定期的な血圧測定を行うことが大切です。
- 腎不全の進行を早める
- 最高血圧が160以上は高血圧
- 最高血圧が180以上は重度な高血圧
- 高血圧は降圧剤で治療
- 定期的な血圧測定が必要
高齢の猫では、甲状腺機能亢進症がないのかの血液検査も必須になるでしょう。
重度な高血圧の猫は、頻繁な吐き気など、本猫にもつらいことが沢山あります。
血圧測定がどれだけ大切なのかを飼い主さんには知っておいてもらいたいです!
尿中のタンパク質
慢性腎不全では、尿中にタンパク質が出ること自体が腎不全を悪化させるので、尿検査の尿中タンパク質(UPC)の値が大切です。
高血圧だと、尿中にタンパク質が漏れ出やすくなるので、降圧剤での治療が検討されます。
また、腎臓に負担をかけない食餌内容の腎臓病療法食を利用するのも有効です。
- タンパク尿は腎不全の悪化原因
- タンパク質が漏れ出ていないか尿検査で調べる
- 高血圧が原因の場合も
- 腎臓治療食や降圧剤で治療
腎臓病のトラブル対処法
慢性腎不全の猫は、食欲不振や吐き気、体重減少、便秘など、様々なトラブルが出ることがあります。
それぞれにちゃんと対処法や治療法があるので、諦めないで猫の幸せな余生を長くしましょう。
- 食欲不振
- 吐き気
- 便秘
特に、食欲不振による体重減少は猫の腎不全の予後を大きく左右します。
体重が維持できている腎不全の猫は、余命が長いので、食欲や体重の維持がとても大切!ということです。
それぞれの対処法について解説していきます。
猫が食欲不振の時の対処法
食餌を変更しても、食餌を温めてみても、点滴治療をしても食欲が出ない、というケースも多くあるのが腎不全の猫です。
そんな時には、食欲が出るお薬も検討してください!
お薬で食欲を出すなんて、、、と思われるかもしれませんが、それでも食べなければ動物は生きていけません。
沢山の工夫をして、腎臓病の治療もしているにも関わらず食欲が出ない時には、食欲増進薬はとても大切なものなのです。
- ペリアクチン
- ミルタザピン
- ステロイド
- カプロモレリン
全て、動物病院で獣医師が猫の状態を判断してから処方してもらうお薬です。
食欲が落ちてる場合、おやつも使ってみてください。
⇒食欲がない時に使ってみよう!ウェットタイプの猫のおやつ
ペリアクチン
抗ヒスタミンの一種で、錠剤とシロップタイプがあるので、飲ませやすい方を選択します。
そこまで強い食欲増進作用は無いのですが、副作用もなく良いお薬です。
ミルタザピン
錠剤だけでなく、耳に塗るタイプの軟膏もあるので、飲ませることが出来ない猫にはとても良いお薬です。
猫にも飼い主にもストレスが少ないお薬と言えますね。
錠剤は日本でも発売されていますが、軟膏は海外薬になり、入手が難しいのが難点です!
ミルタザピンは3日に1度の投薬が基本的な使用法です。
時々、ミルタザピンの投与で活動性が上がって、元気に活動したり妙に鳴くようになる猫さんもいますが、大きな問題はありません。
ステロイド
ステロイドは食欲増進作用があり、昔から薬価も安いので、処方しやすいお薬です。
しかし、血糖値の上昇や免疫力の低下の可能性など、副作用も多くあります。
それでも、猫はステロイドの副作用が出にくいことから使用されることがあります。
カプロモレリン
日本では発売されていないお薬で、動物病院が個人輸入していると使用が可能です。
食欲増進薬として売られているものなので、効果は保証されています。
シロップタイプなので、錠剤が苦手な猫には良いでしょう。
しかし、嫌がるとシロップでヨダレが増えることがあり、そこがネックです。
腎不全の猫の吐き気に対する対処法
腎不全の猫は吐き気が多くなる傾向にあります。
原因は、高血圧や尿毒症、胃酸過多など様々です。
吐くことによって、胃液とともに体の水分が失われ脱水になることも腎不全を悪化させます。
また、吐き気があると食べることもできないので、吐き気をコントロールすることがとても大切です。
- 高血圧、胃酸過多の治療
- 尿毒症があるなら、点滴治療
- 吐き気止めしよう
- 少量で何度も食餌
吐く原因の治療をしながら、吐き気そのものを止める治療もとても大切です。
末期の慢性腎不全の猫であれば、吐き気止めの使用も獣医師と相談しましょう。
- メトクロプラミド
- マロピタント
- オンダンセトロン
上記のお薬は猫の吐き気で使用される代表的なものです。
どれも獣医師が猫の状態を把握して処方しますので、必ず獣医師の指示に従いましょう。
猫の便秘への対処法
腎不全の猫は、基本的に軽度な脱水状態にあり、食欲も低下することから便秘気味になってしまうことがよくあります!
便秘は老廃物を体に長く留めることになり、食欲低下の原因にもなるので、しっかりと対処しておく必要があるでしょう。
- ウエットフードの活用
- うんちが溜まっているか確認
- お腹を動かすお薬
- うんちを柔らかくするお薬
水分補給の面でも、ウエットフードは多く活用してもらいたいアイテムです。
腎臓病の療法食にもパウチやペーストなどのウエットフードが多く発売されています。
そして、本当にうんちが溜まっているのかもチェックも大切!
食べていない時は便が無い可能性もあるので、獣医師にお腹を触ってもらうか、レントゲン撮影で確認しましょう。
胃腸を動かすお薬やうんちを柔らかくするお薬を使うことによって、便秘が解消されることが多くあります!
食欲も出ることがあるのでぜひ獣医師に相談してください。
おわりに
猫の慢性腎不全は、治癒できるものではありませんが、進行を遅くする方法は沢山あります。
なにより大切なのは、早期発見!
SDMAやUPCを測定し、腎不全の始まりに早く気づきましょう。
脱水や高血圧、尿蛋白など腎臓に負担のあるものに対する治療があります。
食欲が低下しないように食欲増進剤や、吐き気止め、便秘解消薬についても活用することがお勧めです!
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