【獣医師監修】猫のはげの原因は?検査と治療、注意点について

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猫がはげる原因【獣医師監修】

猫にはげ?毛が薄くなっている?原因はなんだろう?と感じたことはないでしょうか。

猫のはげ、薄毛、脱毛は、放置しても治らない場合が多く、症状が広がってしまうことがあります。

この記事では、猫がはげてしまう原因と症状、すぐに病院に連れて行った方が良い理由を解説していきます。


本サイトは、多くの猫を診察している獣医師の先生と、猫を10匹以上飼っている管理人が、それらの知見を基に情報を発信しています。

獣医療現場と、猫と暮らして得られた知識や経験がベースになっていますので、ぜひ参考にしてください。


執筆・監修者
山田あさか先生

・日本獣医生命科学大学、獣医学部獣医学科卒
・埼玉県の動物病院で16年勤務
猫の専門科catvocate取得、現在も猫さんの負担を考える診察を実施中

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猫がはげた時にはすぐに動物病院へ

森の中の子猫
猫がはげた時には動物病院へ

猫にはげが見つかったら基本的にすぐに受診していただくのがお勧めです。

特に、保護した子猫の場合は寄生虫やカビなど、感染症による脱毛が多くみられます。


猫さんに「はげ」が見つかった時、「すぐに動物病院に行かなくちゃ!」と思う人は少ないかもしれません。

ですが、人に移る病気、本人(本猫)につらい症状が隠れている、感染症の可能性があるのですぐに動物病院を受診しましょう。

感染症による皮膚炎は、治療の開始が遅くなればなるほど、広がってしまって治療期間も長くなります。

子猫のうちはまだ免疫力も弱く、内臓の機能も強くないために、長期間の投薬で内臓の負担になることもあります

そのために早い受診が大切です。


動物病院に連れて行く前に調べておきたいこと

受診前には獣医師に以下のことが伝えられるようにしましょう。

  1. いつからはげているか
  2. はげは広がっているか
  3. その部分を掻いたり舐めたりしているか
  4. キャットフードを変えていないか
  5. 以前にもはげたことがあったか

いつからはげているか、はげは広がっているのか

はげているのを発見してから、どのくらいの期間がたっていて、広がっているのか、という情報は感染症かどうか見分ける大切なポイントです。

その部分を掻いたり舐めたりしているか

痒みがあるのかどうかも、診断の大切なポイントなので、猫さんの行動をよく観察しておきましょう。

キャットフードを変えていないか

猫さんは食べ物のアレルギーで皮膚に問題が出ることもあるので、食べたものに変化がないのかも、大切な情報です。

以前にもはげたことがあったか

以前にもはげたことがあった場合、季節に関連していないか、自然に治ったのかも獣医師としては知っておきたいでしょう。

実は検査と同じくらい重要なのがこの「問診」です。

診断に必要な情報を漏らすことなく伝えられるようにしましょう。


猫のはげの原因と治療は?

スコ座り
猫のはげの原因と治療は?

猫さんは犬と違って、脱毛の原因である細菌性皮膚炎が少ない動物です。

しかし逆に皮膚炎が出来てしまうと、犬のように簡単に治療で良化しないことが多いのが特徴です。

では、どのような原因で脱毛(はげ)が起きるのでしょうか?

猫さんの脱毛(はげ)に多い原因を説明していきます。


カビ(真菌症、皮膚糸状菌症)

カビ、真菌症、皮膚糸状菌症と呼ばれるもので、痒みの少ない脱毛が特徴です。

人、犬、ウサギ、鳥、爬虫類など、ほとんどの動物にうつります

猫の皮膚糸状菌症の原因のほとんどはMicrosporum canis(ミクロスポルムカニス)というカビ菌です。

子猫や老猫、人でも幼児や高齢の方、あるいは免疫力が落ちている方では容易に感染してしまうので、注意が必要です。

そのままにしておくと酷くなるタイプのはげ「脱毛」で、早めの受診と診断、そして治療が必要です。

治療期間は数カ月に及ぶこともあり、その間に同居の猫さんや人に移らないように隔離しておくことが大切です。


猫カビについての詳しい記事は以下を参考にしてください。

猫カビは自然治癒を期待しない!真菌症の症状と治療法【獣医師監修】


ストレス

猫さんも人と同様にストレスがかかるとはげが出来てしまします。

ただ、この場合のはげは人と違って脱毛ではなく、舐めすぎて毛が抜ける抜毛(ばつもう)になります。

通常であれば、グルーミング(毛づくろい)は正常な行動です。

しかし、猫さんに「恐怖・葛藤・欲求不満・退屈」など、いわゆるストレスがかかると、それを紛らわすために過剰に毛づくろいをして自分ではげを作ってしまうのです。

ストレスの原因となるものとしては、以下のものがあげられます。

  • 刺激の少ない退屈な環境
  • 人を含む同居の動物と相性が悪い
  • 孤独、ネグレクト
  • 過干渉、無理強い
  • 環境の変化、環境の不備(トイレが少ない、狭すぎる環境など)
  • 加齢による認知機能の低下

猫さんの本能や欲求を満たす生活環境を整えるように配慮しましょう。


痛み

猫さんの舐めはげの原因として、実は多いのが「痛み」の存在です。

猫さんは痛みや違和感がある場所をしきりと舐める性質があるためです。

なので、はげを見つけた時には、皮膚の問題だけではなく、その内側に隠された痛みについても確認する必要があります。

痛みの原因として多いのは、膀胱炎、関節炎など炎症です。腎結石や便秘でも舐めはげをつくることが知られています。

検査では、血液検査、レントゲン検査、尿検査、エコー検査などが実施されることが多いです。


原因が痛みである「はげ」の場合には、皮膚にアプローチする治療だけでなく、痛みの原因に対する治療が必須となります。

本人も痛みで辛いことが多いので、痛みのサインである「はげ」を見逃さず、軽く考えないようにしましょう。


特に近年で人気の品種である「スコティッシュフォールド」は関節炎の発症が1歳未満から始まることが多いです

つまり、通常では高齢期から始まる関節炎の痛みが、1歳未満という非常に若い時期から始まっているのがスコティッシュフォールドさんなのです。

スコティッシュフォールドさんの飼い主さんは、その事実もしっかりと把握して、足や尻尾に舐めはげが出来ていないかチェックするようにしましょう。


スコティッシュフォールドの詳しい歴史や特徴はコチラ

お猫様図鑑「スコティッシュフォールド」垂れ耳の猫


寄生虫

保護猫さんや、多頭飼育の猫さん、屋外に出られる環境の猫さんに多いのが寄生虫による「はげ」です。

猫さんのはげの原因となる寄生虫は疥癬(かいせん)、ノミが主なものになります。

疥癬(かいせん)はとても強い痒みが特徴的で、ネコショウコウヒゼンダニが皮膚にもぐりこんでトンネルを掘ることで沢山のフケやカサブタができます。

ネコショウコウヒゼンダニという名前ですが、人や犬にも痒みをもたらすことがあるので疥癬と診断されたら、感染がほかの動物に広がらないよう接触を避けるようにしましょう。


ノミの寄生だけでは、猫さんがはげてしまうことは少なく、ノミアレルギーになると痒みからはげができてしまうことがあります

ノミアレルギーの場合は、少数のノミがいただけでも異常な痒みが出るのが特徴です。

そのため、実際にノミを見たり、ノミ糞が見つからないことも多くあります。

拾い範囲に痒みやハゲができてしまっていて、痒みが強い場合にはノミアレルギーを疑います。

まずはノミ駆虫薬を投与し、かゆみ止めの治療が開始されます。

屋外に出さない、多頭飼育では全頭の駆虫薬(ノミダニ予防薬)を投与するなど、予防法があるので実施しましょう。


その他の原因

若い猫さんであれば食物アレルギー、免疫過剰による痒みが原因ではげを作ってしまうことがあります。

この場合は、免疫を調節するようなお薬やステロイドを使用します

完治ということが難しい体質のようなものなので、生涯お付き合いしていくことになるでしょう。


また、外に出る猫さんであれば、ケンカをしてケガを負うとその部分がはげてしまうことがあります

小さなケガでも、その下に膿が多く溜まっていることがあり、気付いた時には、はげだけでなく皮膚に穴があくこともあるので、ケンカ傷に痛みがある時にはすぐに受診しましょう


最後に、背中にたらすノミダニ予防薬による脱毛です。

背中に垂らしたノミダニ予防薬によって、ごそっと毛が抜けてその後に毛が生えてこないことが稀にあります。

これは体質によるものなので、最初に垂らすお薬(スポット剤)を使う時には、少量を垂らしてみて、2-3日は皮膚に変化がないことを確かめるのがお勧めです。


場所によって原因が違う?はげる場所はどこ?

白猫 毛づくろい
場所によって原因が違う?はげる場所はどこ?

原因によってある程度、はげる場所に傾向があります。

おうちの愛猫さんのはげが、何によるものなのか推測するのに役立つでしょう。

ただし、絶対ではないこと、そして検査をしなければ確定はできないということは、理解しておいてください。


猫の耳がはげた原因

猫さんの耳にはげができる場合、原因として考えられるのは3つです。

  • カビ(皮膚糸状菌症)
  • 蚊に刺され
  • 光線過敏症

カビであれば、耳だけでなく他の場所にもはげが広がっていきます

蚊による皮膚炎は耳や鼻梁(びりょう)が多く、痒みが強いのが特徴です。

夏季にだけ出て、耳や鼻に病変がある時には、家の中でも蚊に刺されているのかもしれません。

また、白い猫さんで耳の先に炎症や脱毛が見られた時には、光線過敏症(太陽の光に弱い皮膚)の可能性があります

多い病気ではありませんが、窓辺の光の調節が必要なので白猫さんの飼い主であれば知っておきましょう。


猫の足がはげた原因

四肢にはげができることはよくありますが、原因は年齢によって違う場合があります。

子猫の場合

子猫さんであれば、カビや寄生虫の可能性があります。

この場合は足だけでなく、シッポの先や顔にもはげができます。

何もしなければ、はげが広がっていくのが特徴です。

成猫の場合

成猫さんの足のはげであれば舐め壊し(ストレスなど)や免疫異常(アレルギーなど)の可能性が高いです。

基本的に、舐めやすい部分しかはげないのが特徴です。

老猫の場合

老猫さんでは、足の関節が痛くて踵(かかと)や肩の近く、手首付近に舐め禿げができることが多くあります。

高齢になって、高い場所に上がらなくなった、その場所を触ると嫌がる、寝起きには動きが悪いということがある場合には、手足のはげが関節炎に由来しているかもしれません



猫の背中がはげた原因

ストレスで背中がはげてしまう猫さんもいれば、実は腎臓に石がある状態で、腎結石の痛みから舐め禿げをつくっている猫さんもいます。

腎臓はお腹の中でも背中側に張り付いているので、腎臓に痛みが出ると背中を舐め壊す猫さんが多くいます

腎臓にばい菌が入ってしまうと腎盂腎炎(じんうじんえん)という病気になりますが、これも痛みが強いようです。

元気食欲が低下していて、背中に舐め禿げがある時には腎臓の問題も考えましょう。


ノミの寄生では、背中に痒みや湿疹が出ることが多いので、背中の広範囲にわたって舐め禿げが出来るときには、ノミ感染も可能性に上がります。

特に、外に出る猫さんや、保護猫さん、ノミダニ予防をしていない猫さん、新しく猫さんが家に来た時には、ノミ感染があるかもしれないので、体の隅々をチェックして、ノミ糞(細かい黒いツブツブ)を探すようにしましょう。


猫のお腹がはげた原因

原因が分からない特発性膀胱炎(とっぱつせいぼうこうえん)も含めて、膀胱炎はとても痛みが強くでます。

そのため、膀胱炎体質の猫さんはお腹を舐め壊していることがよくあります

また、精神的に繊細なタイプの猫さんもストレスがかるとお腹を舐めて毛が薄くなることが多いです。

稀ではありますが、免疫異常をふくむ慢性的な腸炎の猫さんは、腹痛があるためにしきりとお腹を舐めていることがあります

便の状態が緩め、あるいは排便回数が増えている、体重が減っている、食欲が無い、などの症状とともにお腹にはげが出来ている時には、腹痛が原因のはげかもしれません。


猫がはげている時に注意すべきこと

子猫 木の上
猫がはげている時に注意すべきこと

保護してきたばかりの猫さんは、感染症によってはげいてることが多いので、その感染症が人に移る可能性を考えなくてはいけません。

また、先住の動物(猫・犬・ウサギ・モルモットなど)にもうつる可能性があるカビ(真菌症)やノミ、ダニ感染などもあるため、新たに猫さんを家に入れる時には、最低でも一週間はケージ内で隔離することをお勧めしています。

これは猫さんが環境に慣れるために、そっとしておくのに必要な期間であり、その一週間の間に隠れた病気が発症してこないかを確認するためにも大切です。


また、スコティッシュフォールドさんは、軟骨異常の遺伝子があるために耳が折れています。

つまり、生まれつき軟骨異常による関節炎になることが約束されている状態です

そのために他の猫種では考えられないほど若くして踵(かかと)の関節や尻尾の関節に異常が出て、常に痛みがある生活を送っているかもしれません。

スコティッシュフォールドさんの場合は若くても段差の少ない環境を整備してあげることが大切です。

どんな猫さんでも、はげが見つかったときには、すぐに受診することが大切です。

原因を見つけるのが早ければ早いほど、猫さんの問題解決につながります。



まとめ

猫 毛づくろい
猫のはげの原因は?検査と治療、注意点についてのまとめ

猫さんのはげには、感染症(カビ、寄生虫など)や痛み、ストレス、免疫異常など、様々な原因が隠れているので、受診が必要です。

ワンちゃんに比べると、猫さんのはげは難治性(なかなか良くならない)ことも多いです。

獣医療だけではなく、猫さんの生活環境の見直しも含めて治療になります。

猫さんの環境エンリッチメントについても考えるようにしましょう。

また、飼い猫に関して悩みがある方は、「同じ悩みを抱えている」「同じことを経験した」など、飼い主同士で情報交換が出来るサイト【DOQAT】があります。

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動物を飼っている方は優しい方が多く、親身になって答えてくれますので、経験した生の声を聞きたい方はぜひ登録してみてください。

【獣医師監修】
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管理人

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