猫の膀胱炎は、気温の下がり始める秋に多く見られます。
長く雨が続く秋雨の時期が要注意で、排尿回数が増えたり、血尿が出ることで飼い主さまが気づきます。
そして、猫の膀胱炎の多くは「特発性」、原因不明なのに起きているものが多いです。
人や犬では細菌性の膀胱炎がほとんどですが、猫は原因特定が簡単ではありません。
原因が不明ということは、猫の膀胱炎は治療が難しいということです。
そのため、しっかりと話しを聞いてくれて、環境改善やサプリメント、治療食、治療薬を使って包括的に治療をしてくれる動物病院が必要です。
この記事は、簡単には治らない猫の膀胱炎の、正しい知識と心構えについて解説していきます。
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猫の膀胱炎は秋に多い?
夏から秋へ変わり、秋雨の時期に気温がグッと下がると、膀胱炎症状が出る猫が増えます。
猫にとって、寒くなること自体がストレスなのでしょう。
ストレスは猫の膀胱炎の大きな原因になります。
また、寒くなると飲水量も低下するため、濃いオシッコになります。
猫の濃いオシッコは膀胱にとって刺激があり、膀胱炎の原因になるのです。
濃いオシッコによっては尿中にキラキラとした結晶が析出(せきしゅつ)してしまうことがあり、尿石症と言われます。
猫の尿石症は、食生活や体質によって発生し、膀胱炎の原因になります。
また、秋になって急激に気温が低下することにより、猫の免疫力が低下することがあります。
自律神経が乱れることも多く、猫風邪、猫喘息、心臓病、腎臓病が悪化することも!
持病の悪化は猫の体にとってストレスとなるので、ストレスに弱い猫では膀胱炎も発症してしまいます。
- 寒さによるストレス
- 飲水量の低下による尿石症
- 持病の悪化
飲水量を増やす工夫はコチラ
⇒【水を飲ませる工夫】猫ちゃんの病気を予防しよう
来院する原因の5%前後が膀胱炎!?
猫が動物病院に来院する原因の中で、膀胱炎症状が5%前後も占めています。
人であれば、残尿感や排尿痛、膀胱の痛みなど、辛い症状が出て、すぐに自覚ができるので発症から治療までが最速で行われます。
ところが猫はそうはいきません。
まず、猫から話せないので、猫の辛さに人間が気づいてあげる必要があるためです。
猫は病院が苦手なことが多いので、飼い主さまも、異変があっても直ぐに動物病院に連れて行かずに、数日様子を見てしまうこともありますね。
しかし、この数日が猫にとってはとても辛いものになります。
膀胱炎になった人は分かると思いますが、とても痛いのです。
その辛さのために、猫が何度もトイレに行ってみたり、酷くなれば赤いオシッコが出るようになって、やっと受診するというケースが多いでしょう。
トイレに関する記事はコチラ
⇒【猫の粗相対策】猫のトイレ・砂は何がいい?
見逃してはいけない猫の膀胱炎の症状
話せない猫のために、人が毎日猫をしっかりと観察しましょう。
以下のような症状があった時には、膀胱炎かもしれません。
- 血尿
- 排尿時に鳴く
- トイレではないところに排尿
- 頻尿
- トイレにいる時間が長い
- オシッコが出ていない
血尿
あからさまな血尿で、赤いオシッコが出ている時には、尿中に大量の血液が出てきている状態です。
見た目が赤くなくてもオシッコに血液が混じっていることがあるので、色だけでは血尿の判断はできません。
「オシッコの色は普通だから大丈夫」などとは思わずに、他の症状と合わせて膀胱炎に早く気付いてあげましょう。
排尿しながら鳴く
オシッコをしながら、にゃおーーーん!と鳴く猫がいます。
これは、排尿痛のサインであることが多く、オシッコをすると痛みがでているのでしょう。
オシッコをしている様子も観察するのが大切です。
トイレの失敗は膀胱炎かも!?
いつもトイレにしっかりとオシッコをしている猫が、他の場所でオシッコをして、トイレを失敗している時も要注意!
間違ってもトイレの失敗を怒ったりしてはいけません。
病気のサインである可能性があり、後から怒ってしまった自分を責めることになります。
トイレの失敗を発見したら膀胱炎や多飲多尿、ストレスがあるのかも!と心配しましょう。
何度もトイレに行く
いつもは1回から2回しかオシッコをしない猫が、5-6回もトイレに行ってオシッコをしているのであれば異常です。
多頭飼育で誰が何回おしっこをしたか分からない、というのは危険な状態です。
排泄の変化にはすぐに気付けるようにしましょう。
トイレが長い
オシッコの姿勢がいつもより長いのも異常のサインになります。
オシッコをしているのに残尿感があるパターンと、オシッコを出したいのに出せないパターンがあり、後者では命に関わることが!
- 膀胱はカラッポなのに、オシッコをしたい感覚が残っている
- 尿道が詰まっていてオシッコがでない
人間では、単純な細菌性膀胱炎が命に関わるような事態は稀ですが、猫では膀胱炎によって命に関わる事態になるので、軽くみてはいけません。
オシッコを出せていない場合
猫の膀胱炎は、オシッコが出せているのか、出せていないかで、状況が大きくかわります。
オシッコが出せていない猫の体内では以下ようなことが起こるかもしれません。
- 膀胱炎になる
- オシッコに結晶や細胞が大量に混ざる
- 混ざったものが尿道に詰まる
- 膀胱がオシッコでパンパンになる
- 腎臓にオシッコが逆戻りする
- 老廃物が体外に出せない
- 血液中のカリウム濃度が上がる
- 心臓が止まる
膀胱炎から尿路閉塞になり、急性腎不全を発症することがあります。
ここまで悪化させるかどうかは、飼い主さまの対応しだい!
猫の排泄のチェックは、飼い主として最低限の責任です。
以下の条件が揃っている時にはすぐに受診しましょう。
- オシッコの体勢が長い
- オシッコが出ていない
- 吐く
- オス猫
オシッコが詰まるのはオスに多く、メスではほとんどどみかけません。
オスは膀胱炎だけでなく、尿道炎も起きてしまうので、膀胱炎から尿路閉塞が起きやすいようです。
猫の膀胱炎の原因
こんなに怖い猫の膀胱炎の原因は何なのでしょうか?
人と犬では細菌感染が原因の大半を占めていますが、猫では半分以上が特発性です。
- 特発性:55%
- 尿石症:14%
- 感染症:13%
- その他:18%
特発性の膀胱炎というのは、細菌やウイルス、真菌の感染がなく、結石などの原因も見られない、原因不明の膀胱炎です。
原因不明の膀胱炎が半分以上を占めているのが猫の特徴なので、人や犬の膀胱炎と治療が異なります。
その他の原因には、神経疾患や腫瘍性疾患、外傷、医原性などが含まれています。
猫の膀胱炎の二大原因である『特発性膀胱炎』と『尿石症』について詳しく解説していきます。
特発性膀胱炎
特発性膀胱炎は、尿の性状だけでなく膀胱の問題やストレスなどが複雑にからまって発生していると考えられています。
リスク因子はいくつか挙げられており、以下のようなものがあります。
- 完全室内飼育
- 肥満
- ドライフードのみの食餌
- 食餌の頻繁な変更
特発性膀胱炎になりやすいのは、ストレスに弱いタイプに猫であることが多く、飼育環境や気候変動がトリガーとなって発症します。
特に、オス猫は特発性膀胱によって尿道にも炎症が起き、尿道閉塞が起きることが多いので要注意!
特発性膀胱炎の治療
原因不明の膀胱炎であるために、治療で改善しても多くは再発して、膀胱炎症状を繰り返す、ということは覚悟しておきましょう。
推奨されている治療法は以下の通りです。
- トイレの改善
- 猫のプライバシーの確保
- 十分に遊ばせる
- 高い場所に登れる環境
- 可能であれば、安全に外に出る
- 専用の治療食の使用
- 半分以上をウェットフードにする
- 合成フェイシャルフェロモンの使用
- 疼痛(とうつう)の治療薬
「え?こんなことが膀胱炎の治療?」と思われるかもしれません。
しかし、特発性膀胱炎の治療はお薬を飲めば治る!というような簡単なものでは無いのです。
季節の変わり目ごとに再発することがあり、環境の変化によってすぐに再発します。
そのため、動物病院と協力して治療に長期で取り組むことが大切でしょう。
猫の生活環境改善については、近年重視されている「環境エンリッチメント」の記事をご覧ください。
⇒猫の問題行動はなぜ起こるのか?環境エンリッチメントについて考える【獣医師監修】
尿石症による膀胱炎
尿中にミネラル分が析出して、キラキラとした結晶が出来てしまうのが尿石症です。
原因は体質によるものが多いものの、以下の要因が大きく関与しています。
- 体質
- 食事の成分
- 尿ph
- 食事回数
- 飲水量の低下
- 活動性の低下
結晶や結石の原因はストルバイト、シュウ酸カルシウムがほとんどをしめており、稀にプリン、リン酸カルシウム、などがあります。
- ストルバイト:46%
- シュウ酸カルシウム:41%
- プリン:5%
- リン酸カルシウム:1%以下
- その他:7%
ストルバイト結石
猫のストルバイト結石は細菌感染が無い非感染性のもので、6-8歳に多く発生します。
オスとメスの発生に差はなく、以下の品種は発生することが多いです。
- ペルシャ
- ロシアンブルー
- アビシニアン
- シャム
- ヒマラヤン
- 雑種
特に、尿のphが高いと発生しやすい傾向があります。
ですが、ストルバイト結石は内科療法で結石が溶ける可能性があります。
石が出来てしまっても食餌やお薬で治療していれば、結石が小さくなったり溶けてなくなることがあります。
シュウ酸カルシウム結石
ストルバイト結石と違って、シュウ酸カルシウム結石と呼ばれる大きさになったものは、溶けてなくなることはありません。
また、以下の猫種ではシュウ酸カルシウム結石が出来やすいと言われているので気を付けましょう。
- アメリカンショートヘアー
- ペルシャ
- ノルウェイジャンフォレストキャット
- 長毛種
- 雑種
尿phが低いと発生しやすく、膀胱内だけでなく尿管や腎臓内に結石を作ることが多いです。
内科療法では取り除くことが出来ないのがシュウ酸カルシウムの特徴で、膀胱内で大きな結石になってしまった時には、膀胱を切開して取り出す外科手術が必要になります。
膀胱炎かも?と思ったら動物病院へ
猫に膀胱炎の症状が見られたら、すぐに動物病院に行きましょう。
なぜなら、本当に膀胱炎なのかの確定と、猫の辛さを早く軽減してあげる必要があるからです。
では動物病院に行ったらどのような流れになるでしょうか?
- 問診
- 身体検査
- 尿検査
- 血液検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
受付で『オシッコは持ってきていますか?』と聞かれることがあります。
『オシッコの持参』はとても大切です。
オシッコの検査は必須なのですが、家で猫から採尿できていれば、診断までがスムーズに進みます。
オシッコの持参が無いときには、尿検査無しで、問診やその他の検査値から推測しての治療開始となります。
あるいは、『膀胱穿刺』と言って、お腹に針を刺して膀胱から直接に尿を取る方法もあります。
膀胱穿刺が必要なケースも多いのですが、お腹に針を刺される猫の気持ちを考えると、出来ればお家で採尿できるようになっていて欲しいです!
膀胱炎で行くべき動物病院は?
原因の半分以上が特発性であることから、治療は食餌療法や投薬だけでなく、生活環境の改善が大切だということがわかります。
生活環境の改善というのは、一番難しく、時間がかかり、試行錯誤が必要です。
そのため、猫の膀胱炎の治療では、問診をしっかりとしてくれる動物病院でなくてはなりません。
また、除外診断として、尿検査や血液検査、レントゲン検査や超音波検査もしっかりと実施してくれるところが良いでしょう。
- 問診に時間をとってくれる
- 検査をしっかりとする
- 投薬以外の治療法も併用する
- 猫の生活環境改善を提案してくれる
- 治療食の選択肢が多い
- ストレスへの治療も提案する
- 痛みをとる治療も提案する
尿検査をして、明らかに細菌が沢山いて、白血球が大量に出ていれば、細菌性の膀胱炎なので、抗菌薬の治療で良化するでしょう。
しかし、それは稀なので、多角的に猫の膀胱炎治療へアプローチできる病院を選びましょう。
おわりに
秋は気温の急激な低下が起きるために、猫にとってはストレスがかかります。
ストレスが膀胱炎の原因になる猫にとっては、秋は要注意の季節ですね。
オスの猫では、膀胱炎によって尿路閉塞が起きて命に関わる事態もあります!
膀胱炎症状があれば、できれば採尿をして動物病院に行きましょう。
そして動物病院では、特発性膀胱炎の治療にも対応した生活改善の方法も含めてケアしてもらうことが大切です。
猫の膀胱炎はとても辛いものですので、軽く考えずにすぐに受診してくださいませ。
また、飼い猫に関して悩みがある方は、「同じ悩みを抱えている」「同じことを経験した」など、飼い主同士で情報交換が出来るサイト【DOQAT】があります。
登録無料で実際に経験した人が答えてくれます。
動物を飼っている方は優しい方が多く、親身になって答えてくれますので、経験した生の声を聞きたい方はぜひ登録してみてください。
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